鎌倉市長谷からほど近い場所にある極楽寺は、鎌倉では珍しい真言律宗の寺院です。山号を霊鷲山(りょうじゅさん)といい、最盛期には子院を49院所有する大寺院でした。境内や参道の花が美しい寺院として知られており、中でもサルスベリとアジサイは一見の価値ありです。境内には独特の風情があり、映画やドラマのロケ地としても使用されています。ただし、撮影には特別な許可が必要となり、一般の方の撮影は一切禁止です。周囲の方の迷惑となりますので注意してください。
この記事では、極楽寺の見どころや魅力・アクセス方法・拝観料などをご紹介します。
大寺院だった
極楽寺の歴史
極楽寺は、鎌倉市西部の深沢にあった正永和尚が開山した寺院が始まりと伝えられています。1259年、寺院は北条重時によって当時葬送の地であった現在地に移されました。これは、死者を弔う目的だともいわれていますが、詳しいことは今でも分かっていません。
1267年、真言律宗の僧であった忍性(にんしょう)が極楽寺に入山します。これにより寺院は真言律宗に改宗しました。その頃の寺院には施薬院・療病院・薬湯寮(やくとうりょう)などの施設があり、病院のような役割も果たしていたと伝えられています。忍性の入山後、寺院は徐々に発展していき、最盛期には七堂伽藍と49の子院を持つまでになりました。
14世紀頃から、寺院は火災と復興を繰り返すようになります。1591年に徳川家康から領地が与えられたものの、江戸時代初期の頃にはすっかり荒廃してしまいました。1656年に恵性(えしょう)という当時の住職が再度復興しますが、その後一時無住になり、明治時代を向かえます。
1923年(大正12年)に起きた関東大震災で本堂が倒壊するなど大きな被害を受けました。現存する伽藍の多くは近年になって再興されたものです。現在は、花の美しい小さな寺院として知られ、多くの方が拝観に訪れています。
花が美しい
極楽寺の魅力
極楽寺は鎌倉にたくさんある寺院の中でも、花の美しさで知られています。ここでは、極楽寺の魅力をご紹介しましょう。
アジサイやサルスベリを愛でる
極楽寺は四季折々に違う花が楽しめる寺院ですが、中でも山門前のアジサイと境内にある立派なサルスベリが有名です。鎌倉はアジサイが美しい寺が多く、極楽寺の周辺には成就院(じょうじゅいん)や長谷寺(はせでら)といったアジサイの美しさで名高い寺院が複数あります。
極楽寺から成就院へ向かう道筋はアジサイロードとも呼ばれ、毎年6月下旬から7月上旬になるとたくさんの観光客がアジサイ目当てに訪れる人気スポットです。
サルスベリは、7月下旬から8月上旬にかけて見頃を迎えます。アジサイほどの人気はありませんが、落ち着いて楽しむことがでるので、境内をゆっくり見学したいという方はこの時期に訪れるのがおすすめです。春には参道の桜並木が美しい花を咲かせます。
鎌倉らしい風景を楽しむ
極楽寺の最寄り駅である江ノ島電鉄極楽寺駅から寺院までは、鎌倉らしい風情ある町並みが続いています。境内も静かで落ち着いた空間です。
寺院の周囲や境内は、『海街ダイアリー』や『最後から二番目の恋』など、映画やドラマのロケ地にもなりました。これらの映画やドラマファンにもおすすめの場所です。
重要文化財指定の仏像を拝観する
極楽寺の伽藍は度重なる火災にあい、現在、境内には近世以降に再建された建物しかありません。しかし、本尊の木造釈迦如来坐像(もくぞうしゃかにょらいざぞう)をはじめとして、重要文化財に指定されている仏像が何体も転法輪殿(てんぽうりんでん)に安置されています。これらの仏像を安置する転法輪殿は年に二回公開されますので、その時期に合わせて寺院を訪れるのもおすすめです。
風情ある
極楽寺の見どころ
極楽寺は決して大きな寺院ではありませんが、境内は風情があってゆっくりと過ごしたくなる場所です。この項では、極楽寺の見どころをご紹介しましょう。
茅葺屋根の山門
極楽寺の山門は、茅葺屋根が特徴的です。周囲はアジサイやツバキといった樹木に囲まれており、四季折々に異なる花が楽しめます。山門はくぐることができず、境内に入る場合は脇の木戸から中に入る形です。
観世音菩薩を祀る太師堂
太師堂は、中に観世音菩薩が祀られており、方形の屋根が印象的な建物です。山門と同じように樹木に囲まれており、夏になると深緑に埋もれたように見えます。
重要文化財の仏像がある転法輪殿
転法輪殿(てんぽうりんでん)は、毎年春と秋の限られた期間に公開される宝物館です。本尊や重要文化財指定の仏像が安置されています。建物の前に植えられた御車返しの桜は、八重と一重の花が同じ木に咲く珍しい桜です。
中に安置されている本尊の木造釈迦如来立像(もくぞうしゃかにょらいりつぞう)は、京都の清涼寺にある釈迦如来立像を模して作られました。
通常は非公開の本堂
極楽寺の本堂には、不動明王坐像(ふどうみょうおうざぞう)を中心に、薬師如来坐像(やくしにょらいざぞう)・文殊菩薩(もんじゅぼさつぞう)が祀られています。その他に祀られているのは、極楽寺を発展させた忍性像(にんしょうぞう)た彼が使用したという石鉢と石臼です。石鉢と石臼は、病人に与える薬草をすりつぶすのに使われたと伝えられています。
通常は非公開ですが、4月7日・8日・9日だけ内部が見学可能です。
忍性の墓所 忍性塔
忍性塔(にんしょうとう)は、寺院の境内西にある丘陵に建てられた大五輪塔です。高さ3m以上ある巨大な五輪塔は、忍性の墓所と伝えられています。鎌倉後期に造られたと考えられており、1934年には重要文化財に指定されました。内部には忍性の遺骨が納められており、毎年4月8日のみ公開されます。
忍性塔を含む付近一帯は忍性墓と呼ばれており、かつて発掘調査が行われた際、銅製骨臓器(どうせいこつぞうき)など36点が出土しました。これらは重要文化財に指定され、現在は転法輪殿(てんぽうりんでん)に展示されています。
北条重時の墓と言われた五輪塔
五輪塔は忍性塔のすぐ側に建っており、かつては北条重時の墓塔といわれていました。しかし、1961年の大雨で五輪塔が崩れた際に調査が行われ、極楽寺三代住職である順忍の墓であることが分かっています。檀家墓地内に建っているため非公開となっており、現在、見ることはできません。
極楽寺
アクセス情報
住所:神奈川県鎌倉市極楽寺3-6-7
電話番号:0467-22-3402
拝観時間:9時~16時30分
転法輪殿公開時期:4月25日~5月25日・10月25日~11月25日、期間中の火・木・土・日曜日 10~16時(雨天中止)
拝観料:境内自由・転法輪殿300円
駐車場:なし
交通案内:江ノ島電鉄極楽寺駅より徒歩2分