新薬師寺
?評価について

奈良 新薬師寺
国宝の十二神将が鎮座する
こぢんまりとした寺院

新薬師寺は、奈良公園のはずれ、東大寺のちょうど反対側に位置する華厳宗の寺院です。薬師寺といえば奈良市西ノ京町にある薬師寺が有名ですが、この寺院と直接の関係はありません。新薬師寺の「新」は霊験あらたかなという意味で、寺院の歴史は奈良時代にまで遡ります。国宝に指定されている本堂の中には、同じく国宝に指定されている薬師如来像・十二神将が安置されています。

この記事では、新薬師寺の魅力や見どころ・歴史・アクセス方法などをご紹介しましょう。

昔は大寺院だった
新薬師寺の歴史

境内(新薬師寺)

境内

新薬師寺の創建は8世紀頃であるということはわかっているものの、創建者や由来は諸説あってはっきりとは分かっていません。寺伝によると光明皇后が聖武天皇の病気平癒(病が治ること)を祈願して建立したということです。しかし、一方では聖武天皇が光明皇后の病気平癒を願って建立したという説もあります。

創建当初、新薬師寺は金堂や東塔・西塔などの七代伽藍を備えた大寺院でした。奈良時代には南都十大寺の一つにも数えられています。本尊は七体の薬師如来で、通称七物薬師と呼ばれるものです。脇侍の日光・月光菩薩も七体ずつ作られ、これに十二神将が加わって計23体もの仏像が本堂に安置されました。

しかし、780年、落雷によって西塔が炎上。962年には台風の影響で金堂を始めとする大部分の堂宇が倒壊します。現在の本堂は奈良時代に造られたものですが、元は僧侶たちが修行をする食堂(じきどう)であったと推測されてます。

度重なる自然災害ですっかり衰退してしまった新薬師寺ですが、鎌倉時代に華厳宗中興の祖といわれる明恵上人(みょうえじょうにん)の入寺によって再興されました。本堂以外の堂宇は、すべて鎌倉時代に再興されたものです。

江戸時代には薬師如来信仰が盛んになり、祈祷所として多くの方々が参拝するようになりました。現在では、国宝の十二神将が一度に見学できる寺院として広く知られています。

歴史ある
新薬師寺の魅力

新薬師寺の境内は決して広くはありませんが、境内の建物はすべて国宝か重要文化財に指定されています。この項では、そんな新薬師寺の魅力をご紹介しましょう。

国宝の仏像群

新薬師寺の本堂内には、本尊の薬師如来坐像と十二神将像が安置されています。どちらも国宝に指定されており、仏像好きは必見です。

薬師如来坐像は奈良時代から平安時代初期にかけて作られました。寄木作りであるものの胴体と頭・手足は同じカヤノキから作られているため、一本の木材から彫り出されたようにも見えます。光背部分には6体の小仏が彫られており、本尊と併せて七薬師仏です。1975年(昭和50年)の調査で、仏像の胎内から平安初期の法華経が発見されました。こちらも現在は国宝に指定されています。

十二神将とは、薬師如来を守る武将で十二の方角と十二支の守り神でもある仏様のことです。木の骨組みに縄を巻き付け粘土で形を作る塑像という作成方法で作られています。塑像は奈良時代に盛んに作られましたが、現存しているものはごくわずかです。かつては極彩色に着色されており、現在でもその色彩の一部が像に残っています。

ちなみに、現在使われている500円切手のデザインは、十二神将の1人、迷企羅(めきら)大将像です。この迷企羅(めきら)は国によってつけられた名前であり、寺院では伐折羅(ばさら)大将像と呼ばれています。

境内の石仏群

境内の石仏(新薬師寺)

境内の石仏

境内の一隅には、奈良時代から鎌倉時代にかけて作られた石仏群が安置されています。摩耗が激しく表情が分からなくなった石仏もありますが、地蔵菩薩や十一面観音像・毘沙門天像など種類も豊富です。柵や金網などはなく、身近で歴史的な価値も高い石仏を見学することができます。手塚治虫の代表作、『火の鳥・鳳凰編』のラストシーンにもこの石仏群の描写が使われているので、ファンの方にもおすすめの場所です。

新薬師寺境内の
見どころ

新薬師寺の境内にある建物は少ないのですが、見どころは豊富です。この項では、境内にある建物の特徴や注目点などをご紹介しましょう。

南門

南門(新薬師寺)

南門

重要文化財に指定されている南門は新薬師寺の表玄関です。乱石積の基壇の上に建つ四脚門で、どっしりとした威厳が感じられます。

鐘楼

鐘楼(新薬師寺)

鐘楼

新薬師寺の鐘楼は鎌倉時代前期に建てられました。袴腰造の鐘楼は奈良や京都に複数現存していますが、袴腰部分が漆喰塗りで造られているものは珍しく、一見の価値ありです。

内部に吊るされている鐘は天平時代に鋳造されたもので、元は元興寺(がんこうじ)の梵鐘であったと伝えられています。『日本霊異記』という書物の中にもこの梵鐘は登場しており、道場法師(どうじょうほうし)という僧侶が梵鐘に取りついた鬼を退治したという伝説で有名です。現在、鐘楼・梵鐘どちらも重要文化財に指定されています。

地蔵堂

重要文化財に指定されている地蔵堂は、鎌倉時代中期に建造された建物で、鎌倉時代を代表する仏堂です。内部には十一面観音像・地蔵菩薩立像・薬師如来立像が安置されています。

本堂

本堂(新薬師寺)

本堂

本堂は奈良時代の建物で、現在は国宝に指定されています。本堂には天井がなく、上を見上げると梁などの骨組みを見ることができるのが特徴です。40本の柱はすべて円柱で、堂内中央には円形の土壇が築かれています。その中央に安置されているのが国宝の薬師如来座像、周りをぐるりと取り囲んでいるのが十二神像です。

本堂には本尊と十二神像の他、鎌倉時代に作られた地蔵菩薩立像と香薬師如来立像が安置されています。地蔵菩薩の方は平家一門の平景清に似せて作られており、景清地蔵とも呼ばれている仏像です。近年、体内から衣をまとわない裸体の地蔵菩薩像が発見され、大きな話題となりました。発見された地蔵はおたま地蔵として、香薬師堂に秘仏扱いで祀られています。

薬師如来立像は、香薬師像とも呼ばれている飛鳥時代後期(白鳳時代)に作られた仏像です。白鳳時代を代表する仏像の一つとして名高く、8世紀前半に新薬師寺へ納められて以来、人々の信仰を集め続けてきました。

この仏像は3度の盗難に遭っています。最初の2回は明治時代で、この時は人々が必死に捜索をしたおかげで無事に発見されました。しかし、1943年(昭和18年)に3度目の盗難に遭い、現在までその所在は不明のままです。そのため、現在安置されている仏像はレプリカになります。2016年12月、盗まれた薬師如来立像の右手部分だけが鎌倉市にある寺院に保管されているのが発見されました。

東門

東門(新薬師寺)

東門

重要文化財に指定されている東門は、鎌倉時代初期に建てられた簡素な門です。現在は四脚門ですが、建立当初は二脚の門だったと推測されています。現在は閉じられており、くぐることはできません。

新薬師寺
アクセス情報

住所:奈良県奈良市高畑町 高畑町1352
電話番号:0742-22-3736
拝観時間:9時~17時
拝観料:大人600円・中高生350円・小学生150円
駐車場:あり
交通案内:近鉄奈良駅より市内循環バス乗車、破石町下車、徒歩10分
公式サイトhttp://www.shinyakushiji.or.jp

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