壬生寺は京都市大宮にある律宗の大本山です。幕末に新選組の兵法調練場として使われたため、新選組ゆかりの寺院として全国的に広く名が知られています。また、円覚上人(えんがくしょうにん)が創作した大念仏狂言(壬生狂言)を今に伝える寺院です。壬生寺は京都の裏鬼門に当たる場所に建っているため、毎年2月には厄除けの節分会が盛大に行われます。
今回は、壬生寺の魅力や見どころをご紹介しましょう。
千年以上続く
壬生寺の歴史
壬生寺は平安時代初期の991年、三井寺の僧侶であった快賢(かいけん)が母の為に開いた寺院です。古くは地蔵院や宝幢三昧寺と称していました。京都では珍しい律宗の寺院でしたが、時代を下るにつれて寂れてしまいます。
鎌倉時代中期、寺院は円覚上人によって再建されました。現在まで上演が続いている大念仏狂言は円覚上人が創ったと伝えられています。
江戸時代末期には、境内が新選組の兵法調練場になりました。その縁で、境内には新撰組隊士の墓である壬生塚などが現在も残っています。
1962年(昭和37年)、放火によって本堂と本尊である地蔵菩薩半跏像が焼失してしまいました。現在の本尊は律宗の総本山である唐招提寺から移されたものです。
歴史ある
壬生寺の魅力
壬生寺は大念仏狂言をはじめ色々な魅力がつまった寺院です。この項では、壬生寺の魅力をご紹介しましょう。
1年を通して行われる行事
壬生寺では、大念仏狂言や厄除け節分会をはじめ、1年を通じてさまざまな行事が行われます。大念仏狂言は壬生狂言とも呼ばれている一種の無言劇で、京都三大狂言の一つです。一般的な狂言とは異なり、身振り手振りだけで仏教の教えなどをユーモラスに演じます。4月・10月・2月の年に三回開催され、「カンデンデン」と呼ばれるお囃子も有名です。現在は、無形民俗文化財にも指定されています。
壬生寺は京都の裏鬼門を守っている寺院で、厄除けの節分会は特に盛大です。毎年2月2日から4日まで行われ、法要や狂言が行われる他、出店もたくさん並びます。
現在まで伝わる寺宝
壬生寺には新撰組ゆかりの品をはじめ、大念仏狂言に使われる面や仏像など歴史的に高い価値を持つ寺宝が所蔵されています。そのうちの一部は文化財展観室にて年に一度5月に公開されますので、それに合わせて寺院を訪れるのもおすすめです。
なお、寺宝の一部は壬生寺歴史資料室でも一部公開されています。こちらはいつでも見学可能です。
参拝者が絶えない
壬生寺の見どころ
壬生寺の境内には新撰組ゆかりの史跡を含めてたくさんの見どころがあります。この項では、壬生寺境内の一押し見どころをご紹介しましょう。
表門
壬生寺の表門は高麗門という薬医門を簡略化した門です。薬医門よりも屋根が小ぶりで、手前に出ている鏡柱と呼ばれる柱にも小さな屋根がかぶせてあります。現在の門は、1799年に造られたものです。
一夜天神堂
現在の一夜天神堂は、1852年に再建されたものです。平安時代の政治家である菅原道真が大宰府(九州)に配流される際、このお堂で一夜を明かした故事にちなんで一夜天神堂と名づけられました。天神(菅原道真)の他、金毘羅大権現などを祀っています。
阿弥陀堂
阿弥陀堂は、2002年(平成14年)に再建された新しいお堂です。建築家の山本良介氏によって設計されており、現代的なデザインで人目を引きます。中に祀られているのは、阿弥陀如来三尊像です。
地階が壬生寺歴史資料室になっており、寺宝や新撰組関連の資料が展示されています。なお、壬生寺は薬師如来像を巡る京都十二薬師霊場の四番札所にもなっており、資料室は歯薬師如来像が安置されている巡礼地です。歯薬師如来像(はやくしにょうらいぞう)は歯を見せて笑っているように見えることからこの名が付けられました。
阿弥陀堂の奥には、新撰組隊士が合祀されている壬生塚があります。
弁天堂
弁天堂は1894年(明治27年)に再建されたもので、内部には清水寺の延命院から移された秘仏の弁財天が祀られています。
水掛地蔵堂
水掛地蔵堂内には、江戸時代中期の作と伝わる水掛地蔵が安置されています。水をかけながら願い事をする地蔵尊で、今でも願掛けに訪れる方が絶えません。
夜泣き地蔵
夜泣き地蔵は、阿弥陀堂の西側に安置されている地蔵尊です。幼児の夜泣きや咳止めにご利益があると伝わっています。
中院
中院は、壬生寺境内に残る唯一の塔頭寺院(子院)です。本尊は鎌倉時代に造られた十一面観音像で、健康長寿のご利益があるといわれています。
鐘楼
鐘楼は1851年に再建されたものです。現在は8月9日・10日の精霊迎え鐘や12月31日の除夜の鐘を一般希望者が撞くことができます。
本堂
現在の本堂は1970年(昭和45年)に再建されたものです。本尊は地蔵尊で、隣には千体仏塔があります。
千体仏塔
千体仏塔は1988年(平成元年)に壬生寺の創建1,000年を記念して造られました。石仏は明治時代のもので、京都市の区画整理によって壬生寺に集められたものです。ちょうど千体の仏像が、ミャンマーの仏塔であるパコダの形のように安置されています。
大念佛堂
大念佛堂は、大念仏狂言(壬生狂言)が行われる場所で、1856年に再開されました。狂言が演じられる2階の造りは能舞台とほぼ同じですが、飛び込みや獣台など、ここにしかない舞台装置もあります。現在は国の重要文化財に指定されている建物です。
三福川稲荷
三福川稲荷は、大念佛堂の西側に位置する稲荷社です。三福川とはこの辺りの古い地名である壬生川に由来しています。
近藤勇胸像
近藤勇像は、壬生塚のすぐ近くに位置しています。周囲には芹沢鴨や平山五郎の墓もあり、新撰組ファンは必見の場所です。池田屋騒動があった7月16日には毎年新選組隊士等慰霊供養祭が行われています。
壬生寺
アクセス情報
住所:京都府京都市中京区中京区壬生梛ノ宮町31
電話番号:075-841-3381
拝観時間:8時30分~17時
拝観料:壬生塚 100円・壬生寺歴史資料室 200円
駐車場:あり
交通案内:阪急京都線大宮駅下車徒歩10分