霊雲院(れいうんいん)は東福寺の塔頭寺院で、二つの庭と珍しい二階建ての茶室があることで知られています。東福寺は京都を代表する紅葉の名所ですが、同じ敷地内にあるこの寺院も穴場スポットとして人気です。いつ訪れても美しい庭をゆっくりと拝観できます。
この記事では、霊雲院の魅力や見どころをご紹介しましょう。
国際交流もあった
霊雲院の歴史
霊雲院は、1390年に岐陽方秀(きようほうしゅう)によって開山されました。岐陽方秀は、東福寺の他、南禅寺や天龍寺の住職を歴任した高僧です。1394年に明から詩経集伝などが伝わった際、岐陽方秀がこれらの書物について講義を行ったといわれています。
江戸時代になると、熊本藩主であった細川忠利・光尚父子から遺愛石といわれる須弥壇と石船が送られました。これらを設置した枯山水庭園は、江戸時代中期の作といわれています。幕末から明治にかけて庭は荒廃してしまいましたが、戦後に作庭家の重森三玲(しげもりみれい)氏によって復元されました。今でも遺愛石は九山八海の庭(霊の庭)に鎮座しています。
幕末、西郷隆盛がこの寺院で勤王の僧、月照と維新に向けて密議をかわしました。
明治時代に起こった日露戦争後、寺院の境内はロシア軍の捕虜収容所になります。50人のロシア兵が寺院内で寝起きし、寺院の人々と交流をしました。彼らが故郷を偲んで作ったという弦楽器が、今でも展示されています。
霊雲院の
魅力と見どころ
ガイドブックなどにも紹介されることの少ない霊雲院ですが、庭の美しさは有名寺院のものにも引けを取りません。ここでは、寺院の魅力や見どころをご紹介しましょう。
九山八海の庭(霊の庭)
九山八海の庭(霊の庭)は、1970年(昭和45年)に作庭家、重森三玲氏の手によって修復されました。九山八海とは仏教的な世界観を表わす言葉で、世界は須弥壇を中心に八つの山と八つの海に囲まれていることを意味します。
遺愛石を須弥壇に見立てて八つの海を白砂で表現し、周囲の苔でおおわれた築山が八つの山を表わしている庭です。白砂の模様が波紋のようにも波のようにも見えます。
茶亭から臥雲の庭を見下ろす
臥雲の庭は子書院の西から茶室の観月亭にかかる庭です。観月亭は桃山時代様式の珍しい二階建ての茶室で、二階から庭園を見下ろすことができます。寺号である霊雲を表現したもので、雲と水を鞍馬砂と呼ばれる黄色っぽい砂と白砂で表わしている凝った造りです。
霊雲院
アクセス情報
住所:京都府京都市東山区本町15丁目801
電話番号:075-561-4080
拝観時間:9~16時
拝観料:大人300円・中学生200円
駐車場:東福寺と共通
交通案内:JR京阪電車東福寺駅より徒歩10分