源氏山と鶴岡八幡宮の中間にある英勝寺は、鎌倉唯一の尼寺です。家康の寵愛を受けたお勝の方が出家して開基したため徳川家(水戸徳川家含む)との結びつきが大変強く、水戸光圀も寺院を訪問したと伝えられています。境内には創建当時の建物が数多く残り、見どころも豊富です。
そこで今回は、英勝寺の魅力や見どころをご紹介します。
鎌倉唯一の
尼寺の歴史
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英勝寺の山門
英勝寺は江戸城を築いた太田道灌の居館があった場所に1636年に建立されました。寺院を開基したお勝の方(英勝院)が道潅の子孫であったため、徳川家光が土地を寄進したと伝えられています。
お勝の方は、家康の願いで水戸徳川家の初代藩主、徳川頼房の養母になっていました。そのため、徳川家だけでなく水戸徳川家と英勝寺との結びつきも強く、お勝の方が没した後は代々水戸徳川家の息女が住職を務めていたと伝えられています。
徳川家・水戸徳川家の庇護を受けて栄えた英勝寺は、明治時代を迎えた後も荒廃したり廃寺になることなく伽藍の多くが創建当時のままです。
花の寺と呼ばれる
寺院の魅力
英勝寺は境内に自然が豊富で花の寺という別名があります。ここでは、そんな寺院の魅力をご紹介しましょう。
境内に点在するたくさんの草花
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白藤
英勝寺には、梅・ツバキ・ツツジなど様々な花が植えられています。鎌倉の寺院というとあじさいが美しいことで有名な所がたくさんありますが、英勝寺はいつ訪れても何らかの花が楽しめる寺院です。
盛夏や厳冬は花が少ない季節ですが英勝寺では8月に芙蓉とサルスベリが見ごろをむかえ、12月の中ごろまでは紅葉が楽しめます。
鎌倉独特の墓所であるやぐら
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やぐら
平地が少ない鎌倉では、鎌倉時代に「やぐら」と呼ばれる山肌をくり抜いた墓所が盛んに作られていました。英勝寺の境内にも緑に囲まれたやぐらがあり、三社霊権現や金毘羅様が祀られています。鎌倉以外では見られない物なので、お参りがてら見学するのもおすすめです。
重要文化財が多い
寺院の見どころ
創建当時の建物が数多く残る境内は、見どころが豊富です。ここでは、その中でも一押しをご紹介しましょう。
水戸徳川家よって建立された総門
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総門
重厚な造りの山門は、お勝の方の一周忌にあたる1643年に水戸徳川家によって建立されました。お勝の方が養母となった徳川頼房の子・松平頼重の命によるものと伝えられています。
総門は1923年(大正12年)に発生した関東大震災によって倒壊し、資産家によってすべての部材が買い取られてしまいました。その後私有地に再建されていましたが、2001年に英勝寺が買い戻して2011年に元の場所に再興します。2013年に国の重要文化財に指定されました。
装飾が美しい仏殿
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仏殿
英勝寺の仏殿は1636年にお勝の方によって建立され、1643年に徳川頼房がお勝の方の一周忌にあわせて改築しました。創建当時の姿のままで、軒下には美しい十二支の装飾が施されています。(神奈川県重文指定)
仏殿内に納められている本尊の阿弥陀三蔵立像は、運慶作で徳川家光により寄進されました。
透かし彫りが美しい唐門
唐門の扉の両面には透かし彫りのぼたんが彫刻されています。国の重要文化財に指定されていて、江戸時代初期の優れた建築技術を見ることができる門です。
袴腰造りの鐘楼
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鐘楼
総門と同じくお勝の方の一周忌にあわせて建立された総門は、袴腰造りという珍しい様式です。鎌倉では英勝寺にしかありません。1643年に創建された時のままの姿で、神奈川県の重要文化財に指定されています。
お勝の方(英勝院)の位牌を祀る祀堂
国の重要文化財に指定されている祀堂は、お勝の方(英勝院)の位牌を祀る建物です。屋内だけでなく外側にまで華麗な彩色装飾が施された壮麗な建物で、徳川光圀によって寄進されました。
緑が美しい竹林
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英勝寺の竹林は、壮麗な祀堂のすぐ裏手に位置しています。竹林が美しい場所といえば京都の嵐山が有名ですが、英勝寺の竹林も美しさでは引けを取りません。遊歩道が整備されているので、時間がある方は散策してみると楽しいですよ。
やぐらを利用して祀られた金毘羅宮
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金毘羅宮
英勝寺には神仏習合の名残で金毘羅宮が祀られています。中世の墓所であったやぐらを利用して祀られており、航海の安全を願う方の信仰を集めている宮です。
十六夜日記の著者 阿仏尼墓
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阿仏尼墓
鎌倉市内の寺院に複数ある阿仏尼墓の一つです。こちらもやぐらを利用して祀られています。仏塔を模した珍しい形状のお墓です。
英勝寺
アクセス情報
住所:神奈川県鎌倉市扇ガ谷1丁目16-3
電話番号:0467-22-3534
拝観時間:9~16時
休日:木曜日
拝観料:300円
駐車場:あり
交通案内:JR横須賀線鎌倉駅西口から徒歩12分