明月院は北鎌倉にある臨済宗建長寺派の寺院です。長谷寺・成就院と共にあじさいが美しい寺院として有名で、あじさい寺という別名があります。境内にはあじさい以外にもロウバイ・梅・桜・モミジ・カエデなどが植えられており、1年を通して美しい自然が楽しめる寺院です。自然の他にも、枯山水の庭園や鎌倉の中でも最大級のやぐらなど見どころがたくさんあります。
今回は、明月院の歴史や見どころをご紹介しましょう。
塔頭寺院だった
明月院の歴史
明月院は1159年に起こった平治の乱で没した首藤俊通(しゅどうとしみち)の菩提を弔うため、その子経俊が建立した明月庵が前身と伝わっています。1380年に関東官領・上杉憲方が禅興寺という寺院を再興した際、明月庵は明月院と名を改められて塔頭寺院の首位になりました。塔頭寺院というのは、大規模な寺院の中にある小規模な寺院のことです。
禅興寺はその後鎌倉十刹の首位に命じられ、大いに栄えました。しかし戦国時代になると徐々に勢力がおとろえていき、明治初年には廃寺となってしまいます。塔頭の中で明月院は廃寺を免れました。太平洋戦争後はあじさいの美しい寺として有名になり、現在に至ります。
四季折々の
寺院の魅力
明月院はあじさいと紅葉が美しい寺院です。ここでは、美しい自然に囲まれた寺院の魅力をご紹介しましょう。
参道のあじさいを堪能する
明月院といえば初夏に見ごろを迎えるあじさいが有名です。境内に植えられたあじさいは約2,500株。ほとんどがヒメあじさいという日本古来の種類で、青い色の花を咲かせます。その美しさは明月院ブルーとも呼ばれ、いつまでも見飽きることはありません。特に山門へと続く参道の両側に咲くあじさいは見事です。
あじさいの美しさでは鎌倉でも屈指の寺院ですから、見ごろを迎える頃は境内が大変混み合います。少しでもゆっくりとあじさいを観賞したいという方は平日の朝、開門と同時に訪れるのがおすすめです。
本堂後庭園の花しょうぶと紅葉を見る
明月院の本堂後庭園は花しょうぶと紅葉の名所として有名です。毎年、花しょうぶの開花時期と紅葉の時期だけ庭園が公開され、美しい風景が楽しめます。
庭園には約3千本の花しょうぶが植えられており、見ごろは五月の下旬から六月の上旬までです。休日の庭園は混み合いますが、あじさいの時期ほどではありません。平日の午前中ならばゆっくり観賞できます。
秋の庭園開放の時期は、紅葉が見ごろを迎える11月下旬です。庭園から臨む紅葉もすばらしいのですが、方丈内の悟りの窓と呼ばれる丸窓から見る紅葉は一見の価値があります。まず悟りの窓から紅葉を眺め、それから庭に出て視界一杯の紅葉を臨むのがおすすめの楽しみ方です。
自然以外の
一押し見どころ
明月院には自然以外にも見どころがたくさんあります。ここでは、あじさいや紅葉以外の見どころをご紹介しましょう。
こじんまりとした山門
明月院の山門は人が2人並んで通れるくらいのこじんまりとしたものです。華やかさや荘厳さはありませんが、境内の自然と調和した風情が感じられます。山門までの参道は境内で最もあじさいが美しい場所として有名です。
丸窓が有名な方丈
方丈には、明月院の本尊である聖観音菩薩坐像が祀られている他、本堂後庭園の一部が臨める丸窓(悟りの窓)が設けられています。窓が丸いのは、禅の悟りや宇宙の真理、大宇宙などを表わしているためです。
密室守厳の木像を祀る開山堂
明月院は室町時代、関東管領、上杉憲方によって前身である名月庵から塔頭、明月院になりました。この時、明月院を開山した僧が密室守厳(みっしつしゅげん)です。開山堂には密室守厳の木像が飾られています。茅葺屋根の風情ある建物で、小さな庵のような印象です。
ツツジの花が美しい枯山水庭園
明月院の枯山水庭園は、方丈と本堂後庭園の間に位置しています。こじんまりとした小さな庭園ですが、白砂ときれいに整えられたツツジの植え込みの緑とのコントラストが見事です。
毎年五月上旬になるとツツジが一斉に開花し、白と緑の庭が一気に華やかになります。あじさいに比べると知名度はありませんが、美しさでは引けを取りません。
本堂後庭園(丸窓)の魅力
枯山水庭園の奥に位置する本堂後庭園は、花しょうぶと紅葉の時期以外は非公開です。普段は方丈に造られた丸窓越しにしか臨むことはできません。
丸窓から臨む庭園は独特の風情があり、写真撮影スポットとしても人気です。特にあじさいの時期は写真撮影待ちの行列ができることも珍しくありません。
若くして亡くなった北条時頼廟
北条時頼は、鎌倉幕府の五代執権です。明月院が塔頭として属していた禅興寺の前身である最明寺という寺を建立しました。彼は、執権を退いた後で最明寺で出家生活を送っていましたが、わずか37歳の若さで死去します。かつては禅興寺に廟がありましたが、廃寺になった際に明月院に移されました。
鎌倉十井の一つ甕の井
甕(かめ)の井は、鎌倉十井の一つです。硬い岩盤を垂直に掘られて造られているため、内部に水瓶(みずがめ)のようなふくらみがあります。これが、甕(かめ)の井の名の由来です。くみ上げられる水は、今でも使用することができます。あじさいの季節にはつるべの中にあじさいが活けられていることもあり、風情が感じられる場所です。
鎌倉で最も大きな明月院やぐら
間口7m・奥行き6m・高さ3mの明月院やぐらは、鎌倉にあるやぐらの中で最も大きなものです。やぐら内にある宝篋印塔(ほうきょういんとう)は関東官領・上杉憲方の物と伝えられています。宝篋印塔の背後の壁面に浮き彫りになっているのは釈迦如来・多宝如来・十六羅漢です。
明月院
まとめ
いかがでしたか? 今回はあじさい寺として有名な明月院の魅力や見どころをご紹介しました。境内の建物をゆっくり拝観したい場合は、あじさいの季節を外して訪れるのがおすすめです。境内には石仏やウサギの石像がいたるところに置かれていて、季節の花が供えられています。建物や花々だけでなく、小さな石仏や石像に目を止めてみるのも楽しいですよ。
明月院
アクセス情報
住所:神奈川県鎌倉市山ノ内189
電話番号:0467-24-3437
拝観時間:9~16時(6月は8時30分~17時まで)
休日:なし
拝観料:300円(6月は500円・本堂後庭園拝観は別途500円)
駐車場:なし
交通案内:JR横須賀線北鎌倉の駅から徒歩10分