京都市東山区、泉涌寺(せんにゅうじ)山内にある善能寺(ぜんのうじ)は、洛陽三十三所観音霊場の一つに指定されている寺院です。泉涌寺の塔頭寺院として長い歴史を持ち、境内には日本最古と伝えられる稲荷社が祀られています。
この記事では、善能寺の魅力や見どころをご紹介しましょう。
創建者は空海
善能寺の歴史
善能寺は806年に空海によって創建されました。創建当時は下京区二階堂町にあり、平城天皇の勅願寺であったと伝えられています。1555年、後奈良天皇によって現在の地に移転されて泉涌寺の塔頭寺院になりました。
明治時代になると寺院は廃仏毀釈によって荒廃しますが、1887年に再興されます。1971年(昭和46年)には、北海道の山岳地で遭難したバンダイ号の遺族が祥空殿(しょうくうでん)というお堂を寄進しました。このお堂にはその後、洛陽三十三観音に指定されている聖観世音菩薩が祀られます。
1972年(昭和48年)、作庭家の重森三玲によって池泉庭園、遊仙苑が造られました。
塔頭寺院
善能寺の見どころ
現在の善能寺は基本的に無人で、自由に拝観できます。ここでは、そんな寺院の見どころをご紹介しましょう。
祥空殿に詣でる
祥空殿には、洛陽三十三観音に指定されている聖観世音菩薩が安置されています。方形造りの屋根が特徴のお堂です。菩薩像を取り囲むように航空殉難者の位牌が安置されています。慰霊堂も兼ねているため、参拝は静かに行いましょう。
日本で最初の稲荷社に詣でる
境内の片隅に鎮座している古色蒼然(こしょくそうぜん)とした小さな神社が、日本最初の稲荷社と伝わる社です。この神社の由来には、次のような伝説があります。弘法大師が道を歩いていた際、稲わらを背負った老人と出会いました。老人は自らを二階堂に住む柴守長者(しばもりちょうじゃ)と名乗り、空海の仏法を守護すると告げます。その言葉に感激した弘法大師は、長者を稲荷大明神と祀る神社を寺院内に建立したということです。
遊仙苑を見学する
遊仙苑は昭和の名作庭家、重森三玲によって造作されたもので、飛行機から地上を眺めた鳥瞰図(ちょうかんず)をイメージして造られています。雲紋築山(うんもんつきやま)は雲と飛行機を象っていると言われ、寺院が航空殉難者を慰霊していることを強く意識した庭です。苔と四季折々の花が美しい庭で、秋になると紅葉と苔のコントラストも楽しめます。
善能寺
アクセス情報
住所:京都府京都市東山区泉涌寺山内町34
電話番号:075-561-1551
拝観時間:9~16時30分
拝観料:境内自由
駐車場:泉涌寺のものを使用
交通案内:JR 京阪東福寺より徒歩15分
公式サイト:http://www.mitera.org/zennouji.php