宝山寺
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奈良 宝山寺
大阪商人の信仰を集めた
神仏習合の寺院

奈良県生駒市、生駒山山中に建つ宝山寺(ほうざんじ)は、真言律宗大本山の寺院です。本尊として不動明王をお祀りしている他、鎮守神として聖天(大歓喜天)をお祀りしています。生駒の聖天さんとして人々に親しまれており、日本三大聖天の一つです。江戸時代には商売繁盛のご利益があるということで、大阪商人の信仰を集めていました。

この記事では、宝山寺の見どころや魅力をご紹介しましょう。

神様と仏様を祀る
宝山寺の歴史

参道(宝山寺)

参道

宝山寺は、もともと大和時代に役小角(えんのおづの)が開いた山岳修行の道場であったと伝えられています。弘法大師空海が修業に訪れていたという伝説も残っており、生駒山自体も人々の信仰を集めていました。

江戸時代初期、湛海律師(じんかいりっし)という僧侶がここに不動明王と聖天(歓喜天)を祀り寺院を建立します。これが、実質的な宝山寺の始まりです。湛海律師は、生駒山山中で厳しい修業を続けながら堂宇を増やし続け、十数年後には現在のような伽藍を完成させました。

生駒山中で修業に励む湛海律師のうわさは、やがて京都や大阪にまで広がります。時の関白、近衛家熈(このえいえひろ)が湛海律師の祈祷を受けて病気が治ったのをきっかけに、皇室や徳川将軍家からの信仰も集めるようになりました。また、京都の住友家(現、住友グループ)が宝山寺を信仰し始めたことにより、大阪や京都の商人たちもそれにならって宝山寺へ参拝するようになったということです。

人々の信仰は明治時代になっても変わらず、1918年(大正7年)には寺院参拝のために日本最初のケーブルカーが設置されました。このケーブルカーは今でも現役です。寺院周辺には門前町が形成され、昭和の中頃まで大変な賑わいを誇っていました。神様と仏様を両方お祀りする神仏習合の寺院として、現在も参拝客が途切れることはありません。

参拝者が絶えない
宝山寺の魅力

宝山寺は、現在でも年間約300万人もの方が参拝に訪れます。この項では、そんな宝山寺の魅力をご紹介しましょう。

様々な神仏が祀られている境内

奥の院 参道(宝山寺)

奥の院 参道

生駒山は昔から霊山として崇められており、多くの修験者が修行の場としていました。宝山寺は、真言宗の寺院でありながら境内には様々な神様や仏様が祀られており、その雰囲気は独特です。

平安時代末期頃になると、神道の神々は仏教の仏が化身した姿であるという本地垂迹説(ほんちすいじゃくせつ)が唱えられます。そのため、明治時代に神仏分離令が発布されるまでは寺院に神様が祀られていたり、逆に神社に仏像が祀られていたりしていました。

宝山寺の入り口には鳥居があり、仏である不動明王と仏教の守護神である聖天(大歓喜天)が一緒にお祀りされています。境内をじっくり見て回れば、いろいろな神様や仏様を見つけることができるでしょう。

境内や門前町から臨む絶景

境内からの眺望(宝山寺)

境内からの眺望

宝山寺境内前の門前町や境内の最奥に位置する奥の院からは、麓の町が一望できます。また、夜には夜景を楽しむことができ、ロマンチックなデートスポットとしても人気です。宝山寺の拝観は16時までとなっていますが、門前町には飲食店も多く、食事をしながら夜景を眺めることができます。

参道や境内の自然

金剛殿(宝山寺)

自然に囲まれた境内(金剛殿)

宝山寺は生駒山に抱かれるようにして建っているため、境内には樹木が豊富です。中でも桜の季節は、参道の桜並木が美しく、それを目当てに大勢の参拝客が訪れます。夏は深緑が目にまぶしく、奥の院まで歩けば手軽に山歩き気分を楽しめるのでおすすめです。

宝山寺境内の
見どころ

たくさんの神様・仏様が祀られている宝山寺境内は、見どころも豊富です。この項では、主要な建物の特徴や見どころをご紹介しましょう。

一の鳥居

一の鳥居(宝山寺)

一の鳥居

一の鳥居は、宝山寺の入り口に建つ石造りの鳥居です。かつては近鉄生駒駅近くに建てられていましたが、1975年(昭和50年)の駅前再開発に伴って現在の場所に移されました。一の鳥居の前にあるもう一つの鳥居はニの鳥居といいます。鳥居は仏教の守護神でもある天部の神様を祀っている証です。ちなみに、この鳥居は石造りの鳥居としては国内最大級の大きさを誇ります。

総門

総門(宝山寺)

総門

一の鳥居をくぐり、さらに石段を上がると見えてくるのが総門です。鳥居に比べると小さな薬医門ですが、歴史の風格を感じさせます。門へと至る参道の両脇に建つ石柱に刻まれているのは、寄付をした人たちの名前です。

地蔵堂

地蔵堂(宝山寺)

地蔵堂

地蔵堂は、福徳地蔵尊像(ふくとくじぞうそん)や融通観音像(ゆうずうかんのんぞう)など、6体の仏像を祀るお堂です。この2体の石像は宝山寺が建立された当初に寄贈されたと伝わっています。残りの4体の仏像は昭和に入ってからここに安置されました。

本堂

本堂(宝山寺)

本堂

本堂は1680年に建立された建物で、宝山寺最古の建造物です。五面四方、重層(二階建て)の護摩壇堂様式となっています。本堂のすぐ後ろに迫っているのは般若窟(はんにゃくつ)と呼ばれる山岳修行の場です。現在は立ち入ることはできませんが、弥勒菩薩像が祀られています。

本堂内部に安置されているのは、宝山寺を建立した湛海律師(じんかいりっし)が作ったと伝えられている不動明王像です。ちなみに、本堂の軒下には、阿修羅場と書かれた扁額がかかっています。ちなみに、阿修羅場とは不動堂という意味です。

聖天堂拝殿

拝殿(宝山寺)

聖天堂拝殿

聖天堂拝殿は、聖天(歓喜天)をお祀りする聖天堂を詣でるための建物です。江戸時代、聖天は商売繁盛の神様として大阪商人の信仰を集めました。そのため、拝殿は飾り灯籠がぐるりと吊るされた壮麗な造りになっています。

境内の至るところに巾着袋と交差した大根のモチーフがありますが、これは聖天が手に持っている砂金袋と聖天の好物を表わしているものです。

文殊堂

文殊堂(宝山寺)

文殊堂

文殊堂は湛海律師が宝山寺を開山して350年を記念する事業の一環として、1978年(昭和53年)に建立されました。中には知恵を司る仏様、文殊菩薩が祀られています。毎年受験シーズンには多くの受験生が参拝したり祈祷をしたりする場所です。

常楽殿

常楽殿と観音堂(宝山寺)

常楽殿(左手前)と観音堂(奥)

常楽殿は、如意輪観世音菩薩坐像(にょいりんかんのんぼさつざぞう)・吉祥天像・毘沙門天像が安置されているお堂です。こちらも商売繁盛のご利益で知られ、聖天堂拝殿と一緒に詣でる方がたくさんいます。

観音堂

観音堂は、1845年に再建された観音像を祀る建物です。常楽殿が近代的な造りなのに対し、観音堂は瓦葺の屋根が印象的な古式ゆかしい造りをしています。寺院の記録によると、観音堂の本堂脇間に祀られていた十一面観音像がお堂の再建にともなって現在の観音像になったということです。

延命水

延命水は生駒山から引かれた湧き水で、飲むと健康長寿の効果があるといわれています。また、この水を使って料理を作ったところ大変繁盛したといういい伝えも残っており、健康だけでなく商売繁盛のご利益を望む方にもおすすめです。

烏枢沙摩明王

烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)は明王に分類される仏様で、炎を用いてすべての穢れを焼き尽くすといわれています。これが転じて、不浄を清める場所、すなわちトイレの神様として信仰を集めるようになりました。烏枢沙摩明王は婦人病などの平癒のご利益がある仏様で、産後の肥立ちをよくしてくれる仏様として信仰を集めています。

多宝塔

多宝塔(宝山寺)

多宝塔

多宝塔は、1952年(昭和32年)に建立されました。元々この場所は常楽殿が建っていたところです。かつて、この地に常楽殿を建立しようとしたところ、地中から和同開珎5枚が出土しました。五重塔などの仏塔を建てる時に古銭などの宝物を地中に埋める風習があることから、この地には昔から塔を建てる計画があったことが推測されています。

大師堂

太師堂は、奥の院へと続く参道の途中にある弘法大師空海をお祀りするお堂です。宝山寺の前身である山岳修行の道場で空海も修行をしたという伝説が残っているころから、1967年(昭和42年)に聖天信仰を続けてきた篤志家の寄付によって建立されました。堂内には、有識縁者の位牌も安置されています。

子安地蔵

子安地蔵は、子どもの健やかな成長を祈り、幼くして亡くなってしまった子どもの菩提を弔うものです。参拝をするときに水をかけるので、水掛地蔵の別名もあります。

奥の院本堂

奥の院本堂(宝山寺)

奥の院本堂

奥の院本堂は1705年に護摩道場として建立されました。1853年に火事によって焼失してしまいますが、1856年に再建されて現在に至ります。内部に安置されている不動明王は、本堂に安置されている本尊に似せて作られたものです。

開山堂

開山堂(宝山寺)

開山堂

開山堂は、開山者である湛海律師(じんかいりっし)をお祀りするお堂で、1769年に建立されました。開山堂の後ろには開山廟があり、湛海律師が葬られています。内部に祀られている湛海律師の像は60歳のときの姿を象ったものです。1964年(昭和39年)に開山堂手前に建立された遥拝所の唐破風が目を引きます。

大黒堂

大黒堂は、七福神の1人である大黒天を祀るお堂です。朱色の柱が印象的で、付近からはふもとの町が一望できます。

獅子閣

獅子閣は、1875年(明治8年)に聖天堂が再建された際、迎賓館として建てられました。棟梁は宮大工である吉村松太郎氏です。吉村氏は、3年間横浜へ洋館建築の勉強に出向いた上で、獅子閣を建設しました。

獅子閣は一見すると洋風の造りですが、よく見ると漆喰の壁や切妻型の屋根など日本家屋建築の技術があちこちに使われています。内部も洋室と和室を備えた和洋折衷の造りで、明治時代に建てられた洋風建築模倣の建物として文化財的な価値も高いものです。現在は重要文化財に指定されています。

宝山寺
まとめ

いかがでしたか? 今回は宝山寺の歴史や見どころをご紹介しました。宝山寺では、様々な願い事を聞き届けてくれる神様や仏様が祀られています。ですから、境内を散策してお願いを聞き届けてくれる神様や仏様を探すのもいいですね。なお、宝山寺の参道や門前町の町並みも風情があります。寺院を参拝した後は、町を散策してみるのもおすすめです。

宝山寺
アクセス情報

住所:奈良県生駒市門前町1-1
電話番号:0743-73-2006
拝観時間:8~16時30分(10月~3月は16時閉門)
拝観料:無料(特別展などは有料)
駐車場:あり
交通案内:近鉄生駒駅下車、鳥居前駅よりケーブルカー乗車、宝山寺駅下車、徒歩10分
公式サイト:http://www.hozanji.com

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