弘源寺は天龍寺の塔頭寺院です。創建当時は亀山の麓に広大な寺領を有していましたが、たびたび火災に遭遇し、変遷(へんせん)を重ねて1882年(明治15年)に末庵である維北軒と合寺しました。本堂には、長州藩の藩士が切りつけた刀傷がいまだに残っています。現在、寺院は非公開です。毎年春と秋の特別拝観の時だけ諸堂や庭園などが一般に公開されます。
今回は、弘源寺の魅力や見どころをご紹介しましょう。
変遷を重ねた
寺院の歴史
弘源寺は1429年に室町幕府の官僚、細川持之が創建した寺院です。開山は夢石疎石の法孫(孫弟子)にあたる玉岫(ぎょくしゅう)禅師で、持之の院号から弘源寺と名付けられました。
創建された時は小倉山の麓に位置し、広大な寺領を有していたと伝えられています。その後天龍寺と同じようにたびたび火災に遭遇し、変遷を余儀なくされました。
1882年(明治15年)に維北軒(いほくけん)と合寺し、現在の場所に移ります。今も本堂に残る刀傷は、1864年に起きた蛤御門の変の際に弘源寺に逗留した長州藩士が試し切りと称してつけたものです。
春と秋に見られる
寺院の魅力
前述したように、現在の弘源寺は年に2回しか公開されません。ここでは、訪れた時に見逃さないよう寺院の魅力や見どころをご紹介します。
諸堂を拝観する
弘源寺には、本堂と毘沙門堂があります。本堂は客殿形式で寛永年代の造営です。本尊として祀られているのは聖観世音菩薩で、その左側に細川右京太夫持之公の位牌、右側に玉岫禅師木像を祀っています。
毘沙門堂は、重要文化財指定の毘沙門天像を祀るお堂です。掲げられている扁額は、弘法大師直筆と伝えられています。天龍寺七福神の一つに数えられている毘沙門天像は、左手で宝塔を捧げ右手で戟を執る躍動感あふれる造形です。
古刹の庭園を楽しむ
弘源寺の境内にはいくつかの庭がありますが、その中の代表格が虎嘯(こしょう)の庭です。虎嘯とは、「龍吟雲起、虎嘯風生」(龍吟じて雲起こり、虎嘯きて風生ず)という言葉に由来します。嵐山を借景とした枯山水庭園で、春の桜や秋の紅葉と白砂・岩・苔の調和は見事です。
この他に、入り口から本堂の庭は様々な草木が植えられ、春と秋では違った美しさを見ることができます。奥の庭は樹木だけでなく苔も美しい場所です。
竹内栖鳳とその一門の日本画を見る
竹内栖鳳は、近代日本画の先駆者で戦前の京都画壇を代表する大家でした。弘源寺住職の田原周仁師と交流があり、息子の竹内四朗氏が病気になったときは、弘源寺で療養したと伝えられています。
寺院には竹内栖鳳の絵画やその一門、画塾「竹杖会」会員が描いた襖絵や扇絵が多数収蔵・展示され、春と秋の公開時には見学可能です。
弘源寺
アクセス情報
住所:京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町65
電話番号:075-881-1232
拝観時間:特別公開の時 9~17時
拝観料:特別公開の時のみ 大人500円・子ども300円
駐車場:なし
交通案内:阪急嵐山線嵐山駅から徒歩10分
公式サイト:http://kogenji.jp