宝筐院は嵯峨野にある臨済宗の寺院です。室町時代から江戸時代にかけては天龍寺の山外塔頭(境内の外にある塔頭寺院)でしたが、現在は単立寺院になっています。庭園が紅葉の名所として有名です。テレビや雑誌などでよく紹介されているので、見たことがある方も多いと思います。境内には楠木正行(くすのきまさつら)と足利義詮(あしかがよしあきら)の墓が並んで建っていて、こちらも参拝可能です。
ここでは、宝筐院の見どころや魅力をご紹介しましょう。
政敵同士が眠る
寺院の歴史
宝筐院は、平安時代に白河天皇の勅願(天皇が自ら祈願すること)によって建立されました。建立当初の名を善入寺といい、平安時代末期から鎌倉時代にかけては皇族が入寺して住職を務める格式が高い寺院だったと伝えられています。
南北朝時代になると、南朝と北朝の争いから寺院は一時期衰退してしまいました。その後、夢窓疎石の高弟である黙庵周諭禅師(もくあんしゅうゆぜんじ)が入寺し、臨済宗の寺院として復興させます。室町幕府の二代将軍、足利義詮は黙庵に深く帰依し寺院の伽藍整備に力を入れました。現在、義詮は政敵だった南朝方の武士の楠木正行(くすのきまさつら)と並んで境内に眠っています。
八代将軍足利義政の時代、寺院は義詮の院号にちなんで現在の名前である「宝筐院」に改められました。室町時代は将軍家の保護もあって寺院は大いに栄えましたが幕府が滅びると衰退していき、室町時代から江戸時代にかけて天龍寺の山外塔頭になります。幕末には廃寺になってしまいましたが、50数年の時を経て再興されました。
紅葉が美しい
寺院の見どころ
宝筐院は嵯峨野屈指の紅葉の名所として有名な寺院です。ここでは、寺院の魅力や見どころをご紹介します。
秋の紅葉を楽しむ
宝筐院といえば紅葉です。公式サイトにも美しい紅葉の写真や紅葉カレンダーが掲載されています。土日祝日は大変混み合いますので、時間に余裕を持って出かけるか早めの拝観がおすすめです。
境内を入ってすぐの所から美しい紅葉が始まります。本堂からも紅葉を臨むことができ、その美しさは圧巻です。地面を覆うコケと紅葉のコントラストは見事で、見飽きることがありません。
庭園は写真撮影をするこもできますが、三脚は持ち込み禁止です。大型カメラも使用できません。
楠木正行と足利義詮の墓を詣でる
境内の一角には、楠木正成の嫡男、楠木正行と室町幕府二代目将軍、足利義詮の墓が並んで立っています。楠木正行は南朝方の武士であり、足利義詮は敵対する北朝方の総大将でした。
2人は共に宝筐院中興の祖である黙庵と面識があり、正行は自分の死後のことを黙庵にお願いしていたと伝えられています。正行が四條畷の戦いで高師直に敗れて討ち死にした後、黙庵は約束を守って彼の首を引き取り境内に墓を作りました。
黙庵から正行の話を聞いた義詮は彼の人柄に感心し、死後は正行の隣に葬って欲しいと遺言を残します。遺言はかなえられ、義詮の墓は正行の隣に作られました。
歴史を偲びながらお墓に詣でるのもいいですね。
庭園を散策する
宝筐院の庭園は紅葉が際立って有名ですが、春や夏も秋に引けを取らない美しさです。境内には様々な植物や樹木が植えられていて、春や夏に見ごろを迎えるものもたくさんあります。
春は桜やつつじが見ごろを迎え、モミジの新緑が目にまぶしい季節です。生命の息吹を感じます。
夏は木々の緑が深さを増して、深い森の中にいるような気分です。夏も終わりに近づくと苔庭に朱色や白色の彼岸花が咲きます。緑と朱色・白のコントラストは美しく、一見の価値ありです。
宝筐院
アクセス情報
住所:京都府京都市右京区嵯峨釈迦堂門前南中院町9
電話番号:075-861-0610
拝観時間:9~16時(11月は16時30分まで)
拝観料:大人500円 小中学生200円
駐車場:なし
交通案内:JR嵯峨野線嵯峨嵐山駅から徒歩15分
公式サイト:http://www.houkyouin.jp/index.html