京都府宇治市にある興聖寺(こうしょうじ)は、伏見城の遺構を利用して建立された曹洞宗の寺院です。元々は深草にあった寺院ですが、江戸時代初期に現在の場所で再興されました。境内だけでなく、琴坂と呼ばれる参道も見どころの一つです。
この記事では、興聖寺の見どころや魅力をご紹介します。
日本初の禅道場、
興聖寺の歴史
興聖寺は、宋(中国)から帰国した曹洞宗の開祖、道元が1233年に京都の深草で開創した同名の寺院が始まりと伝えられています。深草に建立された興聖寺は日本初の純粋な禅道場であり、七大伽藍を持つ壮麗な寺院でした。
興聖寺は、1243年に比叡山延暦寺からの弾圧に遭います。これをきっかけに、開創者の道元禅師は越前領主である波多野義重(はたのよししげ)の勧めで越前に移り住みました。道元禅師が去った興聖寺は衰退し、やがて応仁の乱などの戦火によって荒廃します。
1633年に淀城主となった永井信濃守尚政(ながいなおまさ)は、興聖寺がこのまま廃絶してしまうのを惜しみ、伏見の遺構を用いて現在の地に本堂・開山堂・僧堂・庫院・鐘楼・山門などを建立しました。寺院を建立後、尚政は道元禅師に深く帰依していた高僧の万安英種(ばんなんえいじゅ)を中興開山者に迎え、興聖寺を再興します。
興聖寺を再興した後も、尚政は寺院を庇護し続けました。やがて興聖寺の再興は朝廷の知るところとなり、朝廷からも庇護を受けるようになります。権力者の後ろ盾を得た興聖寺は大いに栄え、越前永平寺・能登總持寺・加賀大乗寺・肥後大慈寺と共に、日本曹洞五箇禅林(にほんそうとうごかぜんりん)と称せられるようになりました。
興聖寺は現在まで、曹洞宗の専門道場として大勢の僧侶を輩出し続けています。
栄え続けた
寺院の魅力
興聖寺は江戸時代初期に再興されてから現代まで、曹洞宗を代表する寺院の一つとして栄え続けています。ここでは、そんな寺院の魅力をご紹介しましょう。
参道や境内の自然
興聖寺の境内は自然が豊かです。本堂前庭はサツキが見事で、本堂横の庭は京都府の名勝に指定されています。毎年5月になるとサツキが見事に咲き誇り、そのあでやかな美しさは一見の価値ありです。
興聖寺は境内だけでなく、参道の美しさも広く知られています。宇治川沿いから寺院まで続くゆるやかな坂道の参道は、傍を流れる谷川の音が琴の音のように聞こえることから琴坂と名付けられました。道の両側にはカエデの木が多く、紅葉の美しさから宇治十二景の一つに選ばれています。
坐禅会で禅に親しむ
興聖寺では、広く曹洞禅を知ってもらうために日曜坐禅会や、境内拝観とセットになったオプション坐禅会を開催しています。初めての方には丁寧にやり方を指導してくれるので、観光客だけでなく地元の方にも好評です。
オプション坐禅会は30分程度と短時間ですから、観光の途中に参加することもできます。参加したい方は事前の申し込みが必要です。
境内にある建物の
見どころ
興聖寺の境内にはたくさんの建物があり、見どころも豊富です。ここでは、その中でも一押しのものをご紹介しましょう。
龍宮造りの山門
興聖寺の山門は、龍宮造りという中国風の建築様式です。現在の山門は1844年に再建されました。白い漆喰で固められた楼台にアーチ形に開けられた門は、龍宮門とよばれています。歴史の風格を感じさせる古色蒼然とした楼上に安置されているのは、釈迦三尊と十六羅漢です。
江戸時代に造られた鐘楼
興聖寺の鐘楼は1651年に建立されました。吊るされている梵鐘には、儒学者である林羅山(はやしらざん)が自選自書した銘が刻まれています。現在でも10時と16時に鐘が撞かれており、その音色は興聖の晩鐘と呼ばれて宇治十境に選ばれるほど美しいものです。
入山受け付け場所 薬医門
1846年に建立された薬医門は、鐘楼の左側に位置するこぢんまりとした門です。ここが入山受け付け所になっています。
伏見城遺構を移築した本堂(法堂)
興聖寺の本堂は、1648年に伏見城の遺構を移築して建立されたと伝えられています。正面に掲げられているのは、四条天皇の勅額(直接天皇が書いた額)です。
本堂内の天井は、伏見城が落城した際に武士達がつけた血の手形や足跡が残る縁板を使用しており、血天井とよばれています。廊下は歩くたびに独特な音がする鴬張りで、これも戦国時代の名残です。
道元禅師の木像を祀る開山堂(老梅庵)
開山堂は、道元禅師500回大遠忌にあたる1750年に東禅院の大悲殿を移築して建立されました。老梅庵(ろうばいあん)という別名があります。堂内に祀られているのは、竹製のいすに座る道元禅師の等身大木像です。木像の内部には、道元禅師の御霊骨が納められています。
興聖寺
アクセス情報
住所:京都府宇治市宇治山田27-1
電話番号:0774-21-2040
拝観時間:9~16時30分
拝観料:本堂のみ300円
駐車場:なし
交通案内:京阪宇治線宇治駅下車、徒歩10分