京都大原にある寂光院は、平清盛の娘である徳子が出家後に余生を過ごした寺院として有名です。聖徳太子が創建したという伝説が残っているほど歴史がある寺院でしたが、2002年(平成12年)に放火により全焼してしまいました。現在、境内にある建物はすべて新しく再建されたものです。
この記事では、寂光院の魅力や見どころをご紹介します。
平家物語で有名な
寺院の歴史
寂光院の創建年代は、現在もはっきりとは分かっていません。一説によると、聖徳太子が父である用明天皇の菩提を弔うために、自身の乳母であった玉照姫(たまてるひめ)を初代住職にして建立したということです。
平安時代末期には、平清盛の娘である徳子が寂光院に入寺しました。徳子は平家が滅亡した後も生き残り、この寺院で余生を送ります。1186年、後白河法皇が尼となった徳子を尋ねて寂光院を訪れました。この故事は今でも平家物語の小原御幸(おはらごこう)の段で語られ続けています。この段は、諸行無常を象徴する話として人々の心を揺さぶりました。
安土桃山時代、淀君の命により本堂が再建されます。その後、明治の廃仏毀釈による影響を受けることなく大原を代表する名所として親しまれてきました。
2002年(平成12年)に放火によって境内の建物が全焼してしまいます。現在の本堂は2005年(平成17年)に再興されたものです。本堂と共に、本尊や徳子と二代目住職、阿波内侍(あわじないしのかみ)の像も新しく作り直されました。聖徳太子の作と伝わる六万体地蔵尊は可能な限り修復され、寺院の収蔵庫に保存されています。現在祀られているのは、オリジナルを忠実に再現したレプリカです。
再建された
寺院の見どころ
現在、寂光院の本堂などは古式通り忠実に復元されています。ここでは、そんな境内の見どころをご紹介しましょう。
樹木に囲まれた山門
寂光院の山門は石段を上った道路より一段高い場所にあり、樹木に囲まれています。山門自体はこぢんまりとした造りですが、古色蒼然(こしょくそうぜん)としていて趣きがある場所です。山門を囲む樹木はモミジやカエデなどが多く、秋になると見事な紅葉が楽しめます。
平家物語の主題 諸行無常の鐘楼
寂光院の鐘楼は、山門と同じくこぢんまりとしていてシンプルな造りです。平家物語の一説、小原御幸では、鐘の音が後白河法皇に帰宅時刻が来たことを告げます。この物語により、鐘楼は平家物語の主題である諸行無常が冠せられました。
現在の鐘楼は江戸時代に建立され、梵鐘は太田西兵衛重次によって作られたと伝えられています。秋には周りの紅葉が見事です。
再建された本堂
焼失前の本堂は、安土桃山時代の建築特徴を色濃く残した歴史的価値が高い建物でした。現在の本堂は、焼け残った木材や木組みを入念に調査して5年の歳月をかけて再興したものです。
内部には本尊の六万体地蔵尊と建礼門院徳子の像、徳子の前に住職を務めた阿波内侍(あわのないじ)の像が祀られています。これらの像も新しく作り直されたものです。
どこから見ても正面 四方正面の池
四方正面の池は、本堂の東側に位置し、回遊できるように四方に小径がつけられています。山から引いた水が流れ込むように作られており、三段に分かれた小さな滝やゆったりと泳ぐ鯉が風情を感じさせる池です。本堂や書院など、どこから池を見ても正面に見えるように植栽(しょくさい)が工夫されています。
昭和に造られた孤雲(茶室)
孤雲(茶室)は、昭和天皇が即位された時に使われた御大典(ごたいてん)の木材を下賜されて造られました。1931年(昭和6年)、千宗室宗匠(せんのそうしつそうしょう)によって献茶会が催されて、茶室開きが行われています。孤雲の名は、平家物語の小原御幸に由来して付けられました。
伏見城から寄進された雪見灯籠
雪見灯籠は鉄製の灯籠で、豊臣秀頼によって伏見城から寄進されたと伝えられています。釣り灯籠を大きくしたような形で、小さな猫足がかわいらしいものです。銘文等はありませんが、保存状態も良く歴史的価値が高いものといわれています。
苔むした建礼門院御庵室跡
建礼門院御庵室跡は、その名の通り建礼門院徳子が出家後に住んだ庵の跡といわれている場所です。平家物語では、栄華を極めた平家の人間が余生を過ごすにはあまりにも粗末で寂しい場所だったと伝えられています。
現在は苔むした地面の上に石碑が残されているだけです。近くには徳子が使用したと伝わる井戸も残されています。
復興記念の鳳智松殿(宝物殿)
鳳智松殿(ほうちしょうでん)は寂光院の復興をを記念して造られた宝物殿です。寂光院に伝来する平家物語ゆかりの文化財などを展示しています。ミュージアムショップも併設されていますので、お土産を購入するのもいいですね。
徳子が眠る建礼門院大原西陵
建礼門院大原西陵は、建礼門院徳子の墓所といわれている場所です。江戸時代までは境内にありましたが、明治以降に現在の場所に移されました。三千院の北にある後鳥羽天皇と順德天皇の墓所、大原陵に対して大原西陵と呼ばれています。
大原西陵へと続く沿道植えられている樹木は、カエデやモミジなどです。秋になると境内に負けないくらい見事な紅葉が楽しめます。あでやかに色づいたモミジやカエデの様子は、まるで錦の布を広げたようです。
寂光院
アクセス情報
住所:京都府京都市左京区大原草生町676
電話番号:075-744-3341
拝観時間:9~17時(季節によって変動あり)
拝観料:大人600円・中学生350円・子ども200円
駐車場:あり
交通案内:JR京都駅前から17・18番バス乗車、大原下車徒歩15分
公式サイト:http://www.jakkoin.jp/