猿島は、東京湾にある唯一の無人島であり、最大の自然島です。横須賀でも屈指の人気レジャースポットとなっており、釣りや海水浴・バーベキューなどのアウトドアを楽しめます。また、島内には貴重な旧日本軍の史跡もあり、戦争の爪跡を見て平和の尊さを学ぶこともできるでしょう。
今回は、猿島の見どころや楽しみ方などをご紹介します。観光で猿島を訪れようと思っている方はぜひ参考にしてください。
この記事を読めば、猿島への理解が深まり、猿島の魅力をより堪能できることでしょう。
かつては要塞だった?
猿島とはどんな場所
猿島とは面白い名前ですが、その名の由来は「日蓮上人が船上で嵐に遭ったとき、白猿が現れ猿島まで導いてくれた」という故事に基づいています。このとき、日蓮上人は猿島に避泊して嵐を避けることができたのです。ちなみに、その時に避難した「日蓮洞窟」は弥生時代の居住跡と言われています。猿島には縄文時代から人が居住していた跡があり、実は有人島であった過去もあるのです。
自然を満喫できるレジャースポット
現在、猿島は横須賀の三笠桟橋から船で10分もあれば行くことができます。夏には海水浴場もオープン。マリンスポーツやバーベキューを楽しむ人々で賑わいます。横須賀から船で10分という好アクセスでありながら、日常から離れた大自然を満喫できるレジャースポットとして人気の観光地です。
旧日本軍の要塞島だった
猿島は明治時代から終戦まで、東京湾の守りの要として兵舎や砲台・弾薬庫などが造られ、要塞化されていたという歴史もあります。近隣住人の立ち入りも禁止。そのため、島には手つかずの自然が今もたくさん残されています。また、要塞島でありながら、太平洋戦争の被害もほとんど受けませんでした。ですから、軍施設の史跡もきれいな状態で残されています。
ガイドが同行する史跡巡りツアーも
猿島では、史跡を巡るツアーなども開催され、立ち入り禁止の場所も見学可能です。レジャーだけではなく史跡巡りをしたいという方は、ぜひ利用してみましょう。ガイドが同行してくれますので、より詳しく史跡について知ることができますし、個人で見学していては見逃してしまう細かいポイントまで説明してくれます。
日本に残っているのは4か所
フランス積みとは?
まず、フランス積みの要塞について詳しくご説明しましょう。レンガは直方体の形をした建築資材の一種です。丈夫で耐火性に優れているため、コンクリートが普及する前までは、大規模な建物や橋などに使われました。しかし、レンガは縦方向の目地(レンガとレンガの接触面)が一直線に並んでしまうと、地震をはじめとする外からの圧力に非常に弱くなります。もし、身近にレンガを積んでできた壁などの建築物があったら、一度よく見てみてください。目地は必ず不規則になっています。
フランス積みは、正確にはフランドル積み、あるいはフレミッシュ積みと呼ばれる方法で、レンガの長い部分と短い部分を交互に積んでいく方法です。こうやって積んでいくときれいな模様ができますが、裏面がでこぼこになってしまうため、あまり大きな建物は作られません。日本では明治19年以降公式には、フランス積みの建物は作られなくなったそうです。また、フランス積みで作られた建物の多くが戦争で破壊されたため、現存しているのは猿島のものを含め日本に4か所しかありません。
アウトドアだけではない
猿島の魅力とは
ここでは、猿島の魅力をより詳しくご紹介していきます。アウトドアレジャーを楽しめる以外には、どのような魅力があるのでしょうか?
豊富な自然
猿島は、第二次世界大戦が終了するまで一般人の立ち入りが禁止されていた場所です。そのため、島の大部分に手つかずの自然が残されています。東京を中心とした首都圏は、江戸時代から常に開発され続けてきました。また、外来植物も盛んに持ち込まれましたので、自然の植物も昔と比べて変化しています。しかし、猿島ではいまだにタブノキ(クスノキ科タブノキ属の常緑高木)の原生林が残り、古来のままの自然林を観察することも可能です。
保存状態のよい歴史遺産
猿島は 幸いなことに関東大震災以外、激しい災害にも空襲にも合わなかった場所です。ですから、明治時代の建物などもしっかりと残っています。これは、兵舎、砲台 などいわゆる軍事施設ということも無関係ではありません。軍事施設は戦争が起これば真っ先に攻撃される場所です。そのため、他の施設よりも耐火性に優れた 建築資材で頑丈に造ります。そのため、高温多湿の日本でも劣化が少なく、現在でも問題なく観賞することが可能です。
特に、前述したフランス積みの建物は日本でも現存しているものが少なく、貴重な史跡として、国史跡にも指定されています。半ば植物に埋もれるような史跡は、アニメ映画「天空の城ラピュタ」にそっくりだということで、最近は子どもの見学者も増えているそうです。
マリンスポーツ
猿島は現在、人が住んでいません。ですから、海に生活排水などが流れ込んでいる心配もないのです。ですから、東京湾とは思えないほど水がきれい。また、生き物が豊富に生息している磯も点在していますので、磯遊びもできます。秋から春にかけては、ビーチから投げ釣りも可能ですから、小さい子どもでも安全に磯釣りを楽しめるでしょう。
なお、猿島は夏以外遊泳禁止です。レスキューチームなども常駐していませんし、助けを読んでも到着するまで時間がかかります。いくら10分で行ける場所とはいえ無人島であることには変わりありません。ルールを守ってマリンスポーツを楽しんでください。
どんなものが残っているの?
猿島の歴史遺産
猿島にはどのような施設があるのでしょうか?今回は特に有名な施設を詳しくご紹介していきます。ぜひ猿島に観光に行くときの参考にしてください。
見張り台
切通しや弾薬庫などの先にある階段を上った高台に残されている、軍事史跡です。老朽化が激しいので中に入ることはできませんが、窓があった場所から中を見ることはできます。コンクリート製の円柱とまろみを帯びた壁が残るだけですが、要塞時代の貴重な遺産です。
切通し
切通しとは、山や丘を掘削して人馬が通えるようにした道のことです。トンネルを作るよりも技術がいらないので、猿島は切通しが数か所あります。どれもレンガでおおわれており、ところどころに弾薬庫が設置され、今なお物々しさを感じさせる造りです。また、切通しの上部には植物が生い茂り、外からは要塞島だと分かりにくくなっています。
フランス積みレンガのトンネル
猿島は上空から要塞島と悟られぬように、トンネルもいくつも掘られています。その中には、珍しいフランス積みレンガのトンネルもあり、通行可能です。ぜひレンガの長い面と短い面が交互に積み重なっている様子を観察してみてください。
砲台跡
砲台とは、大砲を設置した台のことです。今はもう大砲そのものはありませんが、要塞島の物々しさを感じ取れる史跡として、観光スポットになっています。うっかりすると見逃してしまいそうな地味なものなので、案内板などをよく見ておきましょう。
要塞跡
猿島には明治13年から昭和16年にかけて22か所の要塞が造られ、さらに太平洋戦争中に5か所の臨時要塞が造られました。現在は兵舎跡、地下室跡、弾薬庫跡などが残されているだけで、要塞そのものはすべて壊されています。しかし、わずかな史跡を見るだけで、在りし日の様子がしのばれるでしょう。一部が見学禁止となっていますが、ツアーに申し込めば見ることもできます。
展望広場
かつては見張り台として機能していた場所は、現在展望台として観光スポットになっています。晴れた日には横須賀の町並みや東京湾を行きかう船なども見ることができ、絶好の撮影ポイントとしても人気です。展望台までの道のりは切通しやトンネル、弾薬庫などの史跡の宝庫なので、史跡見物を兼ねて展望台まで散策するのもおすすめ。史跡のほとんどが植物に覆われ、「天空の城ラピュタのようだ」と評判になっています。
歴史的な謎?
猿島に残された伝説
要塞の島として知られている猿島ですが、その歴史は古く縄文時代の居住跡も発見されています。今回は猿島に残された伝説をいくつかご紹介しましょう。
日蓮上人と猿島
日蓮宗の開祖である日蓮上人は、猿島と縁の深い人物です。前述したように猿島の名前の由来も日蓮上人を案内した白猿から取られています。また、日蓮上人がこの島に上陸した時、サザエの殻で足をけがした漁夫をみて題目を唱えてサザエの殻から角を取ってしまいました。それ以来、猿島のサザエは角がないそうです。さらに、日蓮上人が避泊した「日蓮洞窟」は弥生時代の住居跡だったようで、土器も見つかっています。かつてこの洞窟は江の島までつながっているという伝説もありました。洞窟は見学可能なので、ぜひ見てみてください。
猿島春日神社の大蛇
要塞化するまでの猿島には、春日神社という神社がありました。この神社は毎年7月下旬に大祭が開かれていましたが、その頃になると上総の鹿野山から猿島へ、大蛇が泳いできたという伝説が残っています。この蛇は春日大社の守護神の化身で、島にいるときは日蓮洞窟を住処にしていたそうです。
豊島(としま)
猿島はかつて豊島と書いて、「としま」と呼ばれていました。これは、かつて猿島のほかに笠島、平島、蛸貝島など島は全部で10島が東京湾にあった頃、縁起を担いで「10島」に「豊島」の名を当てたからだそうです。江戸時代から東京湾は埋め立てが進み、猿島以外島はすべて陸続きになってしまいました。もしかしたら何気なく歩いている海沿いの道も、かつては島の一部だったかもしれません。
猿島の植物
前述したように、猿島にはいまだにタブノキ(クスノキ科タブノキ属の常緑高木)の原生林が残っています。かつて、三浦半島全体がこのタブノキやツバキなど、常緑高木が生い茂る昼なお暗い森だったのでしょう。今、三浦半島に原生林の面影はまるでありません。また、残された史跡は、徐々に植物が侵食し、自然の中に没しようとしています。人がいかに高い技術力があろうと、自然にはかなわないと実感できる光景です。
なお、猿島の史跡はきちんと保存されていますので、勝手に植物を取って史跡をきれいにしようとしてはいけません。植物におおわれていることを含めて、史跡なのです。また、植物の採集は禁止されていませんが、足元に十分注意して常識的な量だけを採取するようにしてください。
小さな子どもでも安心
猿島の海水浴
猿島でできるマリンスポーツといえば、海水浴を忘れてはいけません。猿島には、毎年7月中旬~8月下旬まで海水浴場がオープンします。猿島は本来無人島ですが、海水浴の時期だけ、「オーシャンズキッチン」というレストランがオープンするので、食事の心配はいりません。また、更衣室やシャワールームもありますので、着替えや後始末に困ることもないでしょう。つまり、無人島とはいえ他の海水浴場と全く変わりありません。
猿島の海水浴場には、専属のレスキューチーム(監視員)が常駐して事故が起こらないように監視しています。そのため、小さな子どもでも安心して遊ばせることができるでしょう。ただし、いくら監視員がいるからといって、お子様から目を離さないでください。また、飲酒して海に入るのは厳禁です。ルールを守って遊びましょう。
夏の海水浴の楽しみといえば、海水浴後の花火を挙げる人もいるかもしれません。しかし、猿島での宿泊は禁止されています。17時に本土へ渡る最終の船が出ますので、それに合わせて帰り支度をしましょう。また、花火も禁止です。こっそりと泊まったり花火をしたりすれば、罰則の対象となります。
猿島の海水浴場は8月下旬に閉鎖され、監視員も引き上げてしまいます。その後の遊泳は一切禁止されますので、ルールは守りましょう。なお、海釣りや磯遊びなどほかの遊びはできますが、その時にもライフジャケットを着用するなど、安全には十分気を配ってください。無人島ですから事故が起こった場合、助けが来るまでに時間がかかります。
みんなでワイワイ
バーベキュー
猿島では、バーベキューを楽しむことができます。道具一式は島内でレンタルできますので、食材さえ用意していれば、手ぶらでも大丈夫。ただし、島内で食材は販売していないので、横須賀で用意して船に乗り込みましょう。また、楽しめるのはバーベキューだけで、音楽をかけたり騒いだりしてはいけません。そして、何よりも大切なのは、飲酒をして海に入らないこと。海で泳いでバーベキューを楽しみたいという場合は、ノンアルコールビールなどを用意しておいてください。
猿島
まとめ
いかがでしたか? 今回は猿島の魅力や設備について詳しくご紹介しました。猿島は毎年夏になるとたくさんの観光客が訪れます。海水浴にバーベキューを楽しむ人が多いのですが、ぜひ島に点在する史跡にも足を延ばしてみてください。史跡見学だけなら、春と秋の方が歩くのに適した気候のため、おすすめです。
猿島
アクセス情報
住所:神奈川県横須賀市猿島1
電話番号:046-825-7144
料金:猿島航路 乗船料: 大人1,300円・小学生650円・団体 (15人以上)大人1,170円・小児580円
入園料 15歳以上(中学生を除く)200円 小・中学生100円
定休日:猿島航路 3月~11月は毎日運航・12月~2月は土・日・祝日のみ運航 団体予約(30名以上)は平日も運航
駐車場:近隣のパーキングを利用
交通案内:京急横須賀中央駅から三笠桟橋まで徒歩15分・JR横須賀駅から三笠桟橋まで徒歩30分・(車)横浜横須賀道路横須賀ICから、本町山中道路経由三笠桟橋まで約3km
公式サイト:https://www.tryangle-web.com/sarushima.html