二階堂にある覚園寺は、1218年に建てられた薬師堂を1296年に寺院に改めた古刹です。鎌倉時代の風情を色濃く残した場所として知られています。仏像彫刻の多彩さは鎌倉有数ですが、拝観時間が限られているため訪れる方は多くありません。拝観日でも雨が降れば拝観中止になります。それでも、時間を調整して訪れる価値は十分にある場所です。
今回は、覚園寺の見どころや魅力をご紹介しましょう。
薬師堂だった
寺院の歴史
覚園寺は鎌倉幕府二代執権・北条義時によって1219年、薬師堂として建立されました。1296年、第九代執権のに北条貞時が二度と元寇襲来が発生しないことを祈願して寺院へと昇格させます。その後、火事で伽藍が焼失しますが1354年に足利尊氏によって再建されました。
室町時代以降、寺院は後醍醐天皇など時の権力者の庇護を受けて栄えます。現在まで寺院が荒れ果ててしまうことはありませんでした。今では鎌倉時代の風情を色濃く残し、多数の仏像彫刻を所有する寺院として知られています。
風情ある
寺院の魅力
覚園寺は知名度こそ低いですが、境内の美しさなどは有名寺院に引けを取りません。ここでは、そんな寺院の魅力をご紹介しましょう。
豊富な仏像彫刻
覚園寺には重要文化財に指定されている薬師如来をはじめ、脇侍の日光・月光菩薩像や十二神将、やぐらの中に祀られている十三仏・黒地蔵尊(重要文化財)とたくさんの仏像があります。中でも、薬師如来像は両手で薬壺を抱えている珍しい姿です。仏像は自由に拝観することはできませんが、毎日決まった時間に職員の案内の元で拝観できます。
境内の豊かな自然
境内には、樹齢650年以上と推察される鎌倉最大のイヌマキがあります。鎌倉時代から移築されず戦火に焼けることもなかった寺院ならではのものです。秋になると見事な紅葉が楽しめます。1時間ごとに実施されるツアー形式の参拝のため、混み合ってしょうがないということはありません。拝観時間は限られていますが、比較的ゆっくり自然を愛でられます。
覚園寺の
見どころ
長い歴史をもつ覚園寺 は見どころが豊富です。ここでは、その中の一押しをご紹介しましょう。
大楽寺の本堂を移築した愛染堂
拝観のスタート地点である愛染堂は、明治時代に廃寺となってしまった大楽寺の本堂を移築したものです。中に入ることはできず、外からの参拝となります。
中に安置されているのは、本尊の愛染明王坐像・鉄造の不動明王坐像・木造の阿閃如来坐像です。木造の阿閃如来坐像は鎌倉十三仏の一つに数えられています。
秋になると堂の周囲のカエデが一斉に色づき、見事な光景が楽しめると評判です。
足利尊氏が建立した薬師堂(本堂)
1354年に足利尊氏によって建てられた本堂は、禅宗様の建築様式です。建物自体は当時のままですが、創建当時はもう少し規模が大きく屋根に裳階がついていたと伝わっています。
内部に安置されているのは、本尊である薬師如来像・脇侍の日光・月光菩薩像・十二神将像などです。この他、寺院を守る伽藍神像・阿弥陀如来坐像(廃寺・理智光寺の旧本尊)など計22体が安置されています。これほど多くの仏像が同じ場所に安置されている寺院は、鎌倉でもごくわずかです。拝観する際、寺院の職員が仏像を一つずつ説明してくれます。
黒地蔵を祀る地蔵堂
地蔵堂には、重要文化財に指定されている地蔵菩薩像(黒地蔵)と信者が寄進したお地蔵さまが祀られています。その名の通り全身真っ黒の地蔵菩薩像です。これは、地獄に落ちた罪人の苦しみを少しでも和らげようと自分から地獄の火を焚いて火加減を調整していたため、黒くすすけてしまったという伝説に基づいています。
黒地蔵の隣に安置されているのが千体地蔵です。黒地蔵にお願い事をした後、身代わりとして1体持ち帰って供養するとご利益があるといわれています。
移築された旧内海家住宅
旧内海家住宅は、江戸時代の名主の住宅です。1981年(昭和56年)に覚園寺に移築されました。調査の結果、1706年に鎌倉の大工によって作られたことが分かっています。邸内の間取りは板敷の部屋が2つ・畳の間・納戸・土間です。土間には農機具などが展示されています。
並んで立っている開山塔と大燈塔
開山塔・大燈塔は、境内奥に建っている石造の宝篋印塔(ほうきょういんとう)です。開山塔には開山の智海心慧が眠っており、大燈塔には2世大燈源智が眠っています。二つの塔は同じ1332年に建てられました。
覚園寺
アクセス情報
住所:神奈川県鎌倉市二階堂421
電話番号:0467-22-1195
拝観時間:10時~16時(1時間ごとに案内あり。平日12時~13時の回はなし。自由拝観不可)
休日:雨天・荒天・8月・12月20日~1月8日
拝観料:大人500円・子ども200円
駐車場:あり
交通案内:JR横須賀線鎌倉駅から鎌倉宮行き乗車、終点下車、徒歩12分