静岡市の久能山山頂に建つ久能山東照宮は、徳川家康をお祀りした最初の神社です。その歴史は日光東照宮より古く、二代将軍徳川秀忠の命を受けて当時最高の建築技術を使い、権現造り様式で造られました。特に社殿は大工棟梁、中井大和守正清が晩年に手がけた最高傑作といわれ、2010年(平成22年)に国宝に指定されています。
この記事では、久能山東照宮の魅力や見どころをご紹介しましょう。
久能山東照宮の
ご利益
- 金運上昇
- 無事長久(平穏が長く続くこと)
- 家内安全
- 商売繁盛
- 社運隆昌
- 開運厄除け
- 病気平癒
- 学業成就
昔は山城だった
東照宮の歴史
久能山東照宮が建っている久能山には推古天皇の時代に久能山寺が開かれ、鎌倉時代までは禅寺として栄えていました。戦国時代になると武田信玄が寺院を別の場所へ移し、代わりに久能城がつくられます。武田家が織田信長によって滅ぼされると駿河の国一帯は徳川領になり、久能城も徳川の物となりました。
天下を統一した徳川家康は「自分の遺骸は久能山に埋葬するように」と遺言を残します。彼の死後に遺言は実行され、同時に徳川秀忠により家康を祀る神社建設の命が下されました。約1年7ヶ月の年月をかけて建造された東照宮は、その後日光東照宮をはじめとする全国の東照宮のひな形になります。
大工棟梁、中井大和守正清が造営した社殿は、400年以上たった今でもほぼ創建当初の姿です。2010年(平成22年)に社殿のうち、本殿・石の間・拝殿が国宝に指定されました。その他、久能山一帯も文部科学省によって国の史跡に指定されています。
静岡屈指の観光地
東照宮の見どころ
久能山東照宮は静岡県を代表する観光地です。ここでは、東照宮の一押しの見どころをご紹介します。
千段以上ある表参道石段
東照宮は山頂に建っているため、ふもとの石鳥居から一ノ門までは石段が造られています。日本平からロープウェイが開通するまでは、この石段が唯一の参拝路でした。石段は1,159段あり、語呂合わせで「いちいちご苦労さん」と呼ばれています。
絶景が望める一ノ門
一ノ門はふもとから909段目の石段を上った所に建てられています。ここまで来れば東照宮まであと一息。門からは晴れていれば駿河湾が一望できます。疲れが吹き飛ぶような絶景です。
与力の詰め所だった門衛所
江戸時代、東照宮は誰でも参拝できる場所ではありませんでした。門衛所(もんえいじょ)は当時警察官の役割を担っていた与力が詰めていて、警護にあたっていた場所です。
天皇筆の扁額が掲げられた楼門
表参道石段を上がりきったところにある楼門(ろうもん)は、久能山東照宮詣での出発点です。鮮やかな彩色が施された門の二階には、後水尾天皇が自ら書かれた「東照大権現」の扁額が掲げられています
左甚五郎作の彫刻が納めれた神厩
厩とは馬を飼育する場所のことです。東照宮の神厩(しんきゅう)にはかつて本物の馬が飼育されていました。馬は夜になると家康公神廟の隣で休み、朝になると神厩でエサを食べるという生活を続けていたと伝えられています。ある日、馬が朝になっても神厩に戻らないことを不審に思った神職が神廟を確認してみると、馬は静かにそこで永遠の眠りについていました。
この話を聞いた名工、左甚五郎はその馬そっくりの彫刻を作り、神厩に収めたと伝えられています。彫刻の馬の眼球に使われているのは、当時は大変貴重だったガラスです。
江戸時代には鐘楼だった鼓楼
現在は太鼓が納められている鼓楼(ころう)は、江戸時代までは鐘を突く鐘楼でした。明治時代に神仏分離令が発令されると鐘楼は仏教施設ということになり、鐘の代わりに太鼓を納めたと伝えられています。
東照宮のシンボルだった五重塔跡
東照宮の五重塔は三代将軍徳川家光によって建立されました。高さ30mを超える当時としては巨大な建築物で、技術的にも芸術的にも優れた建物として東照宮のシンボル的な存在だったと伝えられています。
明治時代になり神仏分離令が発令されると、五重塔は鐘楼と同じく仏教施設ということで取り払われてしまいました。現在は礎石だけが残されています。
絵馬がかけられていた神楽殿
神楽殿(かぐらでん)とは本来は奉納舞が行われる場所です。東照宮の神楽殿では、舞が奉納される代わりに武家奉納の絵馬を掲げたと伝えられています。
奉納品を納めた神倉
東照宮の神倉(ほくら)は奈良の正倉院と同じ校倉造(あぜくらづくり)の建物です。江戸時代にはここに東照宮への奉納品を納めていました。
元は薬師堂だった日枝神社
日枝神社は明治時代までは薬師如来をお祀りする薬師堂でした。神仏分離令によって東照宮から仏教施設が取り除かれると代わりに山中にあった山王社の御神体が納められ、神社となったと伝えられています。
国宝建造物 社殿(本殿・石ノ間・拝殿)
東照宮の社殿は江戸時代を代表する大工頭、中井大和守正清により造営されました。彼は東照宮の他に二条城・伏見城・知恩院などの普請(建設)を手がけたことで有名です。
東照宮は中井大和守正清が最後に手がけた建物でした。本殿と拝殿を一体化し、間に石ノ間と呼ばれる一段低い建物を設ける様式の社殿が造られたのは久能山東照宮が初めてです。久能山東照宮の建造をもって、この様式が権現造りとして確立されました。
当時最高の建築技術で造られた社殿は壮麗な建物です。特に社殿のあちこちに施された彫刻は天下泰平を願う中国の故事を由来として作られていて、一見の価値があります。
石灯籠が並ぶ廟所参道
廟所(びょうしょ)参道は廟門から御神廟までをつなぐ参道です。ここには社殿のような華やかさはありません。参道の両脇には家康に仕えた武将たちが奉納した石灯籠が並び、厳かな雰囲気です。
家康が眠る神廟(しんびょう)
家康が埋葬された場所には、かつて小さな祠が建てられていました。三代将軍徳川家光が高さ5.5m・周囲約8mの石塔を建立し、現在に至ります。廟が西向きなのは家康の遺言です。
久能山東照宮博物館の魅力
久能山東照宮博物館には、徳川歴代将軍の武器武具・軍陣の道具や神宝など約2千点が収蔵・展示されています。特に徳川家康が生前愛用していた道具類や徳川歴代将軍の武器武具は歴史的価値が大変高いものです。その中でも重要文化財に指定されているスペイン国王から家康に送られた洋時計は、当時の国際交流を示す貴重な資料でもあります。
収蔵品は随時入れ替えをしながら展示されており、歴史好きならば一見の価値ありです。公式サイトには、現在展示されている収蔵品の一部が記載されています。訪れる前に目を通しておいてもいいですね。
家康を祀る
東照宮の行事
東照宮では1年を通じて約60回の祭礼や行事が行われます。ここでは、その中の代表的なものをご紹介しましょう。
家康の命日に行われる御例祭
家康の命日の4月17日には徳川宗家当主を司祭に迎え、御例祭が開かれます。約50種類の山海の食材を金属製の器に盛った三品立神饌(さんぼんだてしんせん)が神前に供えられ、厳かな雰囲気の中で行われる大祭です。
国の繁栄と世界平和を願う御具足祭
毎年2月16日には、歴代将軍の具足(ぐそく)3領と丸もち・菱もち・各種縁起物で構成された具足もちを社殿石の間と拝殿に飾る御具足祭りが行なわれます。これは、江戸時代に将軍家や武家で行われてきた具足飾りの祝儀を神社祭祀に取り入れたものです。飾られた具足を前に、国の繁栄と世界平和を願う御祈祷が行われます。
まとめ
いかがでしたか? 今回は、久能山東照宮の歴史や見どころをご紹介しました。境内を周り博物館を見学すればほぼ丸1日楽しめます。江戸時代初期の貴重な建築物や、徳川家に伝わってきた武器・防具・工芸品などが一度に見られる所は中々ありません。時間をかけてじっくり見学するのがおすすめです。
久能山東照宮
アクセス情報
住所:静岡県静岡市駿河区根古屋390
電話番号:054-237-2438
拝観時間:9~17時(10月~3月 16時まで)
拝観料:大人社殿500円博物館400円 子ども社殿200円博物館150円(共通拝観券あり)
駐車場:日本平ロープウェイの駐車場を利用
交通案内:JR静岡駅からジャストラインバス日本平ロープウェイ行き乗車、終点下車、ロープウェイ乗車
公式サイト:http://www.toshogu.or.jp/index.html